「医者に聞きたい!」ドクター都のほろ酔いがん相談

がんについて対話形式でじっくりと分かりやすく説明していきます。ほろ酔いで(笑)

ケース15 セカンドオピニオンのことで悩む高木さん(45歳、男性)

今回登場するのは、お父様が胆のうがんの手術をされた高木さんです。

手術前後の主治医とのやり取りで不信感を抱くようになったようですが…

 

  

高木さん:父が胆のうがんで手術したのですが、ちょっと主治医を変えられないかと思いまして…

 

Dr都:どうしたのですか?

 

高木さん:実は、手術前の説明と手術後の説明が違っていて、主治医に不信感を持つようになってしまって…。

父も納得がいっていないとことはあるようなのですが、お世話になっている先生だからと、このまま主治医を継続するようなのです。ただ、私たち子供たちは、皆主治医を変えたいけど、どのようにすれば良いか悩んでいるんです。

 

Dr都:まずはセカンドオピニオンという方法が良いでしょうね。

  

高木さん:セカンドオピニオンですか、いきなり転院の話をしても大丈夫でしょうか。

 

Dr都:ちょっと待ってください。セカンドオピニオン=転院ではないんですよ。別の医療機関の医師に”第二の意見”を聞くことがセカンドオピニオンであって、必ずしも転院や治療場所を移す必要はありませんよ。

  

高木さん:そうなんですね。転院が必須だと思っていたので、かなり緊張していました。

 

Dr都:セカンドオピニオンで担当医と同じ診断や治療方針を説明されたとしても、別の角度から担当医の考え方を理解できたり、病気に対する理解が深まったりすることがあります。もちろん、もし別の治療法を提案された場合には、治療の幅が広がるというメリットがあります。

 

高木さん:それならば、ぜひセカンドオピニオンを受けたいですね。

 

Dr都:セカンドオピニオンを受ける前には、現在の担当医の意見(ファーストオピニオン)を十分に理解しておく必要があります。ファーストオピニオンの「病気の状態や進行度、治療法についての考え方」を理解しないままセカンドオピニオンを受けても、かえって混乱してしまう可能性があります。 

 

高木さん:もしかすると、私たちの理解が足りていない部分はあるかもしれません…。担当医への不信感が募って、最近はあまり質問もしなくなってしまって…。

 

Dr都:一度、これまでの経過や今後の治療方針とご家族や本人の意見を話し合う場を設けることが先かもしれませんね。お互い誤解があるかもしれませんし。 その上でセカンドオピニオンを求めた方がすっきりする気がします。

 

高木さん:まずはそれからですね。セカンドオピニオンで他に何か注意することはありますか。

 

Dr都:セカンドオピニオンを受けるに行く時には、先方の医師に伝えたいことや聞きたいことを整理し、お父様の病気の経過と質問事項をメモしてから行くといいですね。セカンドオピニオンは時間が限られているので、時間を有効利用できるようにしましょう。また、できるだけひとりではなく信頼できる人に同行してもらうとよいでしょう。その際に、セカンドオピニオンの目的やこれまでの担当医の説明内容について、必ず皆で理解を共有しておいてくださいね。

 

高木さん:分かりました。当事者である父と私を含めた子供たち皆でしっかりと話し合いたいと思います。

でも、セカンドオピニオンって担当医の先生が気を悪くして、さらに関係が悪化したりしませんかね…。

 

Dr都:それは大丈夫だと思いますよ。今の時代、それで気を悪くするような医者は少ないですし、もし何かあってもセカンドオピニオンを受ける病院も現在の主治医との関係をうまく取り持ってくれますから。

 

高木さん:それを聞いて安心しました。

 

Dr都:今の医療は、従来のお任せ型ではなく、インフォームドコンセント(説明と同意)に基づいて患者側も治療方針の決定に参加するようになっています。より良い治療を求めるためには、主治医と本音でしっかりと話し合う必要があります。

セカンドオピニオンは、「最善だと思える治療を患者と主治医の間で判断するために、別の医師の意見を聞くもの」ですから、心配する必要はありませんよ。

 

高木さん:でも、やっぱり心配です…。

 

Dr都:セカンドオピニオンの目的を正しく理解していない医師や、怒りだす医師がいない訳ではありません。ただ、そのような医師だと、がん治療という経過の長い治療でずっと不安を抱えることになるので、早めに主治医を変えても良いとは思います。

 

高木さん:今の病院は父が通院しやすいし、私たちもお見舞いにも行きやすく、病院のスタッフも気持ちが良い人が多いので、できることなら転院したくないんです。

 

Dr都:セカンドオピニオンの前に、がんの患者会に参加して相談できる仲間を作るという方法もありますよ。そこで主治医との関係改善だったり最新の治療だったり、何かしらの情報を得られる可能性がありますね。

 

高木さん:そんな方法もあるんですね。ありがとうございます。

まずは早急に親兄弟で話し合いをし、主治医の先生ともしっかりと話し合ってから考えたいと思います。

 

Dr都:素晴らしい。頑張ってください!

 

 

~ちょっと一言~

忙しい診療の中で、主治医がひとりひとりの患者さんに割ける時間は限られています。そのような中で、本音で話し合ったりコミュニケーションを取るのは難しい場合が多く、お互いに誤解が生じることがあります。普段病室にいないご家族の方とだと、特に起こりやすいです。でも、しっかりと本音をぶつけて話し合うことで、誤解が解け、より良好な信頼関係が生まれることもあります。