「医者に聞きたい!」ドクター都のほろ酔いがん相談

がんについて対話形式でじっくりと分かりやすく説明していきます。ほろ酔いで(笑)

ケース14 いとこががんの民間療法にはまってしまったという川端さん 続編

前回のお話の続きです。

今回は民間療法についてより詳しくお話していきます。

 

 

 

 

Dr都:この前、いとこさんは外来に来てくれて良かったね。今後抗がん剤治療になるけど、前向きになってくれそうだったし。

 

川端さん:ホント、良かったよ。いろいろとありがとう。今日は俺のおごりだ、たくさん飲んでくれ!

 

Dr都:やった!そういえば、例の気功とお札で治すってところは、仲の良い友人からの紹介って言ってたね。がん患者さんが民間療法に進むきっかけとして、友人や家族といった周りからの勧めの影響は大きいよね。

 

川端さん:だからと言って、あの怪しい民間療法に月15万も払うかねぇ。紹介した友人も友人だよ。

 

Dr都:その人も治してあげようと必死だったんだと思うよ。「そこの施術で、乳がんが消えて手術しなくてすんだ人がいるんだって」って体験談を聞きつけて勧めてくれたみたいだし。

 

川端さん:でもさ、実際にそんなんでがんが消えることってあるの?

 

Dr都:うーん、自然退縮と言って、がんが何もしないで消えてしまうことが10万分の1くらい確率であるとは言われているんだ。もしその体験談が本当だったとしたら、そういう人が実際に当たったのかもしれない。でも、だからと言っていとこさんの乳がんが体験談の人と同じように消えるかというと、そこにチャレンジするのは危険だよね。あとは、ああいった体験談の場合、実際は内緒で病院で治療を受けているってこともあるかもしれない。

 

川端さん:へーっ。民間療法について知りたいな。もっと教えてよ。

 

Dr都:了解。まず、医学的には民間療法は補完代替(ほかんだいたい)医療と呼ばれるんだ。

 

川端さん:ほかんだいたい?

 

Dr都:そう。「従来の標準医療と見なされていない、医学、施術、サプリメントなど」のことで、標準医療を補ったり、代替えしたりする医療ってことね。

 

川端さん:東洋医学は標準医療に入るの?

 

Dr都:ここでいう標準医療は西洋医学のことを指すから、東洋医学は入らないね。エビデンスが少ないので、日本の病院で東洋医学だけでがんを治療することはないんだ。でも、外科手術や放射線治療抗がん剤治療など標準治療の副作用の軽減に漢方薬などの東洋医学が有効なことがあるので、代替えはできないけど、補完する医療としては副作用が比較的少なくて良いと思う。

 

川端さん:でも、漢方薬でがんを治すって宣伝広告を見たことあるよ。

  

Dr都:うーん。日本のほとんどの漢方医は、漢方薬だけではがんを治せず、西洋医学と併用というスタンスなんだけどね。どうやって治すのかは分からないけど、その医師にとっては、漢方薬治療は補完医療ではなく代替医療になるんだろうね。補完医療と代替医療ってオーバーラップすることがあるから、一緒にして補完代替医療って言っているんだ。

 

川端さん:だから、面倒くさい長い名前になるんだね。

 

Dr都:面倒くさいって・・・。あとは、最近流行の免疫治療なんかも代替医療に入ると言えば入るかな。昔流行った丸山ワクチンなども代替医療だね。これらはエビデンスがない治療なので、標準治療にはなれないね。

 

川端さん:でも、それらを勧めている医者もいるんだよね?

 

Dr都:一部は、信念を持ってやっている人もいるね。免疫治療もきちんとエビデンスがあってFDAに認められたやつもあるし、それ以外でもたまに効く人もいるらしいしね。丸山ワクチンはつい最近効果無いって否定されちゃったけど・・・

  

川端さん:都先生は、患者さんがこういった治療をしたいと言ったらどうするの?

 

Dr都:昔は「そんなのにお金を使うくらいならおいしいもの食べたり、旅行したりした方がいいんじゃない」って患者さんにはしないよう話していたね。でも、そんなふうに言ったって、やっぱり患者さんは何かできることを探しちゃう。

特に、できる標準治療が無くなった末期の人とか、再発の恐怖におびえている人などは、補完代替療法が効かないかも知れないと思っていても、一縷の希望にすがることが支えになっちゃったりするんだよね。

 

川端さん:でも、ああいうのって高額じゃない?

 

Dr都:ピンからキリまであるから、ほとんどの人が払える範囲のことしかしていないと思うよ。もちろん借金してまでする人もいるけどね。

個人的には、標準治療をしっかり受けた上で、主治医と相談しながらだったら、補完代替医療は受けてもいいと思っている。もちろん経済的に負担が少ない範囲でね。主治医に相談ができるってことは、標準治療に悪い影響を及ぼす治療かどうかを判断してもらえるからね。主治医が聞き入ってくれないからって、黙って補完代替医療を受けていると、標準治療に悪い影響がでる可能性があるからね。だから、主治医との関係が関係は重要だね。

 

川端さん:確かに、そんなふうに相談できる主治医だったらいいかもね。でも、いとこのみたいな月15万円だと、さすがに主治医に止められるだろうなぁ。

 

Dr都:怒り出す医者もいるからね。怒ったり、頭ごなしに否定したりすると、患者さんには萎縮して主治医に内緒にしたり、最悪、補完代替医療に逃げてしまうかもしれない。だから、まずはその治療に至った経緯や考えをしっかり受け止めてあげて、その上でしっかり否定するか併用を認めるかを判断してあげるといいと思うんだ。経済的な負担も含めてね。そうすれば、高額な治療を受けたけど結局がんが悪化したという、経済的、精神的な負担だけ残る最悪の状態は避けられると思う。

 

川端さん:そっか。でも、末期でもう標準治療ができないって人たちは、代替医療をするしかないよね。

   

Dr都:がんを治すことだけを希望にしちゃうと、そうなっちゃうかな・・・。でも、治らなかった後がきついよね。

そんな場合は、希望の矛先を変えてあげるといいかもしれない。生活の中で大切なことや楽しみを探すことに希望を見いだしてもらい、苦痛を取るなどして生活の質をできる限り保てるよう医療でサポートする。そして、最期は家族に囲まれながら、穏やかな環境で過ごしてもらうというのを希望にしてもらうんだ。

 

川端さん:なるほどね。

 

Dr都:まあ、実際は難しいんだけどね。でも、ゴールをそこに設定したら、補完代替療法とも上手くつきあえると思うんだ。マッサージやアロマセラピー鍼灸などの補完代替医療は苦痛を緩和してくれるかもしれないしね。

 

川端さん:治すより癒やすか・・・

 

Dr都:おっ、いいことを言うね。最期を安らかに迎えるために、補完代替医療にお金を使うのは悪いことではないと思うよ。

 

川端さん:俺もそれだったら良いと思う。高額なのなさそうだし。

 

Dr都:そうだね。治ることに希望を持ち続けるのは悪いことではないし否定はしないけど、その場合の補完代替医療って基本的に高額なんだよね。藁にもすがる思いの人は高くても、治るためだと思って払っちゃうからね。

 

川端さん:弱味につけこむのは頂けないなぁ。

 

Dr都:免疫治療で500万円とか1000万円かかるクリニックもあるからね。たまに訴訟になってるけど。

 

川端さん:1000万??そんだけ取って治りませんでしたって、そりゃあ訴えたくもなるよ!

 

Dr都:最近アメリカで承認された免疫治療は1回5200万円ってのがあったね。それは日本のクリニックレベルでよくやられている免疫治療とはレベルが全然違うんだけどね。日本のは、こんなんで500万??ってのはよくあるね。

 

川端さん:そっか…。あとはサプリメントなんかも高額だよね。

 

Dr都:昔アガリクスってキノコががんに効くといって流行ったんだけど、高価なアガリクスの方が効くんじゃないかって、より高級なものが売れていたなぁ。

 

川端さん:高い方が効く気がするよね、確かに。でも、いずれにせよ効果がないんでしょ?

 

Dr都:サプリメントはがんに効くと証明されたものは一つもないね。

 

川端さん:うーん。それでもがん患者さんはサプリメントを飲んじゃうんだね。

 

Dr都:そうだね。まあ、経済的に無理のない範囲で、完治の希望を持たせないものであればいいと思うよ。ただ、肝機能障害を起こしたり、抗がん剤と併用しない方がいいものもあるから、主治医と相談しながらね。

 

川端さん:医者側ももっと話しやすい雰囲気になってくれるといいんだけど…

 

Dr都:そうだね。私も気を付けます。