「医者に聞きたい!」ドクター都のほろ酔いがん相談

がんについて対話形式でじっくりと分かりやすく説明していきます。ほろ酔いで(笑)

ケース11 主治医に障害年金の診断書を断られた患者さんについての相談

今回登場するのは、ある病院でソーシャルワーカーをしている鈴木さんです。

飲み仲間の鈴木さんから、患者さんのことで相談にのって欲しいという連絡がきました。

なにやら、がん患者さんの障害年金申請について困っているようです。

 

 

 

 

鈴木さん:うちの病院の患者さんで、障害年金を申請できなくて困っている人がいるのよ…。どーしよう。

 

Dr都:ん?何で申請できないの?

 

鈴木さん:まず、主治医ががん患者さんが障害年金をもらえることを知らなかったというのがあって…。

 

Dr都:あー、がん患者さんが障害年金を受給できることを知らない医者は結構いるよね。

 

鈴木さん:そうなのよ。以前、ストマ(人工肛門)を作った患者さんで書いてもらったことがあるから、障害年金の存在自体は知っているはずなんだけど、今回の患者さんはしびれが主訴なの。

 

Dr都:抗がん剤の副作用?それとも、がん自体が悪さをしているの?

 

鈴木さん:抗がん剤の副作用よ。はじめの頃は、抗がん剤を投与した数日だけ軽いしびれがあったみたい。抗がん剤がよく効いていたのでしばらく続けていたんだけど、次第にしびれが強くなってきて、しまいには洋服のボタンをとめられなくなったり、携帯のボタンが押せなくなったりしたので、その抗がん剤を中止したの。

 

Dr都:中止してから、良くなっていないのかな?

 

鈴木さん:だいぶ良くなっていて、日常生活は何とか大丈夫なんだけど、まだ仕事ができるような状態じゃないの。仕事でパソコンを使わなきゃいけないんだけど、キーボードを叩けないって。

 

Dr都:じゃあ、「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」ってことで、障害年金3級の適応かな。2級だと「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、 日常生活の著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」だもんね。

 

鈴木さん:そう、3級。患者さんは国民年金じゃないから、申請できるかなと思って。

 

Dr都:あー、国民年金だと3級は申請できないんだったね。

 

鈴木さん:あれもひどいと思わない?診断日に厚生年金を支払っていた人は3級から申請できるのに、国民年金の人は2級からしか申請できないなんて。

 

Dr都:確かにひどいよね。厚生年金の人の方が年金を多く払っているとはいえ、そこで差別しなくてもねぇ。

 

鈴木さん:とりあえず、その患者さんは初診日から1年6か月経っていて申請できるから、障害年金を取りにいこうと思って。たぶん患者さんは長生きできないからさ、将来受け取る予定だった自分の年金を前倒しで受け取らなきゃもったいないよね。

 

Dr都:うん。もし患者さんが失業手当をもらっていても、障害年金は同時にもらえるし。あると助かるよね。

 

鈴木さん:そうなのよ。でもね… 

 

Dr都:何で主治医の先生は診断書を渋っているの?

 

鈴木さん:抗がん剤の副作用のしびれで仕事ができないような状況だから障害年金を申請したいので、診断書を記入して欲しいと言ったんだけどさ。手足の障害は整形外科の先生に書いてもらうものだから、自分は書けないっていうの。

 

Dr都:そっか。身体障害者診断書と勘違いしているね、それは。

 

鈴木さん:そうなのよ。 それとは違う診断書で、がん治療についての詳細な経緯が必要だから主治医しか書けないって説明したの。がん患者さんの障害年金についてまとめているブログまで見せてね。

 

Dr都:すごい…。患者さんのためにそこまでしてくれるソーシャルワーカーってありがたいね。

 

鈴木さん:そうでもないわよ。実はさ、この患者さんは治療が始まった時から、高額療養費の一時金も厳しいって相談されてたの。だから、治療費に関して負担を減らしてあげられるようにしてあげなきゃって思っていろいろ動いてるの。

 

Dr都:偉い!じゃあ、限度額認定適応証を申請してるんだね?あれって、患者さんも存在を知らないし、誰も教えてくれないもんね。

 

鈴木さん:もちろんしたわよ。だって、手術費用や抗がん剤って、一時支払金だけで何十万も必要になるからね。話を戻すけど、主治医の先生がね、私がさんざん説明した後にこう言ってきたの。「しびれなんて永久的なものじゃないかもしれないし、新生しても断られそうじゃない?そうなると、書いても無駄になっちゃうなぁ」だって。

 

Dr都:えーっ!

 

鈴木さん:悔しくて悔しくて、「もういいです!」って言って診察室から出てきちゃった…。

 

Dr都:そっか…。確かに、年金機構は障害年金に対して積極的ではないから、申請しても断られる可能性があるよね。厳しい県なんて、半分も認めてもらえないらしいよ。

 

鈴木さん:ひえー、半分以下?障害年金に関しては、申請方法もアナウンスしていないし、書類や手続きも煩雑だしさ、ホント支給する気があるのかって感じよ。

 

Dr都:ホントだね。ちなみに、その患者さんのしびれはどれくらい続いているの?

 

鈴木さん:今で6か月くらいかな。一番ひどかった時よりはましだけど、最近はほとんど変わらないって言ってた。それで落ち込んじゃって…。このしびれって普通はどれくらい続くの?

 

 

Dr都:数か月でおさまる人もいれば、数年経っても続いている人もいるんだ。

 

鈴木さん:そっか。主治医の先生は、抗がん剤を中止すれば良くなると言ってたから、患者さんも期待していたんだけどね。半年かかっても良くなっていないものが、そんなに簡単に良くなるとは思えないんだけど…。それでも主治医の先生は、いつかは良くなるかもしれないから、障害の永久認定はできないんじゃないだって言って…。

 

Dr都:そうだね。永久とは限らないけど、数年は続きそうな感じだし、トライしてみても良いとは思うよ。もう一度主治医を説得してみたら?

  

鈴木さん:うーん…頑張ってみるか。患者さんのために。

 

Dr都:そうそう。あと、今後の経過など審査の時に重要となるポイントは、主治医とじっくりと相談しながら記載しなきゃだめだよ。そのためにも、鈴木さんも主治医の先生ときちんと話し合わなきゃね。

 

鈴木さん:了解!冷静に冷静に。

 

Dr都:鈴木さんならできるよ、頑張って!

 

 

 

~ちょっと一言~

障害年金は、自身がこれまで支払ってきた年金を前倒しでもらうだけなのに、こんな制度があるってアナウンスしなかったり、手続きを煩雑にしたり、国民年金加入者と厚生年金加入者での等級の差をつけたりと、「払う気ないでしょ?」と思ってしまいます。

あとは、抗がん剤の副作用でも障害年金がもらえるということを知らない医者も結構いるし、医者側から提案されることはほとんどない制度なので、患者さん自身が知っておくべきだと思います。

あとは、初診時からの経緯と予後に関しての記載次第という面があるので、主治医との関係性は良好に保っていたいですね。