「医者に聞きたい!」ドクター都のほろ酔いがん相談

がんについて対話形式でじっくりと分かりやすく説明していきます。ほろ酔いで(笑)

ケース22 大腸がんの再発を心配する柴田さん

大腸がんの手術を無事に終えた柴田さんが、今度は再発が心配ということで相談がありました。

 

柴田さん(S):手術は無事に終わって、ステージIIという結果でした。主治医の先生は今後再発しないかどうか定期的に診ていきましょうと言っていたんだけど、再発は大丈夫かな?

 

Dr都(以下Dr):ステージIIだと手術でがんをすべて切除できたことになるので、基本的には再発の心配はいらないかな。ただ、手術前の検査で見つけきらなかった微小ながんが体に残っている可能性がないわけではないよ。大腸癌研究会の少し古いデータでは、完全切除術後の再発率はステージIで4%、ステージIIで13%、ステージIIIでは30%と言われているね。。

 

 

S:13%か…微妙だな。

 

Dr:ステージIIでも、がんの顔つきが悪かったり血管やリンパ管への食い込みが強い場合には、再発率が少し高くなるので、再発率を下げるために手術後に抗がん剤治療をすることもあるね。

 

 

S:俺の場合はどうなんだろ?

 

Dr:主治医の先生から抗がん剤治療の説明を受けていないんだったら、再発の可能性が低いタイプだったんじゃない?大腸の中のどこのがんかでお再発の可能性は変わってくるけどね。

 

S:心配だなぁ。再発の可能性を下げる方法ってなにかあるの?

 

Dr:ステージIIで再発の可能性がある場合や、ステージIIIの場合は、手術後に半年間くらい抗がん剤治療を行うことがほとんどだね。それで再発率が10%ほど減らせると言われているよ。ただ、抗がん剤を使用すると副作用の問題があるからね。

 

S:抗がん剤か…できればしたくないなぁ。もしするとなると、どのような副作用があるの?

 

Dr:現在、手術後の抗がん剤治療には①5FU+LV、②UFT+LV、③カペシタビン、④FOLFOX、⑤CapeOXの5種類があって、それぞれ患者さんを見て選択することになっているよ。①と④の場合は、ポートと言って抗がん剤を持続的に注入できるようにするための、器具を皮下に埋める手術をしなければならないんだ。

 

S:うへぇ、また手術かぁ。それは嫌だなぁ。

 

Dr:ポートは局所麻酔で日帰りでできるから、そんなに負担はないよ。それに治療が終われば取り出してもいいしね。

 

S:とは言われてもなぁ。ポートを使わないですむやつは、効きが悪かったりするの?

 

Dr:必ずしもそうではないよ。それにそれぞれ特徴があるんだ。内服だけで済むのは②と③だけど、カペシタビンには手足症候群という副作用があって最後まで続けられない人が結構いるんだ。手足症候群は、手や足のしびれや痛みなどの感覚の異常や、手や足の皮膚の赤みや色素沈着、ひび割れ、水ぶくれ、爪の変形や色素沈着といった副作用の総称なんだけど、手を使う仕事をしていたり、主婦など家庭で水を使う機会が多い人には向かないね。

 

S:うーん。俺の仕事はパソコンを使ったり細かい手作業があるから、③は避けたいかな。

 

Dr:カペシタビンは、手術できない大腸癌、つまり進行や再発大腸がんにも使われているんだけど、抗がん剤の効果が高い人ほど手足症候群が起きやすいと言われているんだよね。50~77%の人に起こるんだけど、もし起こったら減量か中止かしなければならないんだ。患者さんは日常生活がままならないけど、効いているなら続けた方がいいのか…と悩んじゃうことが多いね。セルフケアである程度は対処はできるけど、手足症候群を長引かせると回復が難しくなるから、医者側は中止を勧めるかな。減量した場合の効果は不明だし。

 

S:なるほどね。⑤もカペシタビンが入っているのかな。じゃあ、⑤も難しいな。同じ内服の②はどう?

 

Dr:ひどい下痢や口内炎、骨髄抑制が起こることがあるよ。逆にカペシタビンには骨髄抑制が少ない。

 

S:むむむ、安全な抗がん剤治療は無いということだな。

 

Dr:抗がん剤には必ず副作用があるからね。それが軽いか重いかは人によるんだけど、どんな人に重い副作用が出るかは、残念ながらやってみないと分からないんだ。

 

S: じゃあ、再発の可能性を減らしたいからと言って、無理に抗がん剤をするのは止めた方がいいんだね。

 

Dr:そうだね。ちなみに、④と⑤はそれぞれ①と③にオキサリプラチンという抗がん剤を加えたものだから、より副作用の頻度は多くなるかな。

 

S:その分効きそうな気がするねぇ。

 

Dr:④と⑤はオキサリプラチンによる上乗せ効果で、再発を20~30%抑えると言われているんだけど、オキサリプラチンは手足のしびれという副作用があるんだ。特に⑤なんかは、カペシタビンの手足症候群とオキサリプラチンの手足のしびれが同時にでると、かなり大変だね。

 

S:じゃあ、再発予防になんて使わない方がいいんじゃない?

 

Dr:再発のリスクが高い人にはやっぱり使いたくなるよね。リスクが低かったり、高齢だったりしたら、他のものでもいいんだけど。

 

S:なるほどね。使い分けがある訳ね。

 

Dr:あとは、その人の生活環境や就労状況にも応じて抗がん剤を選択するかな。外来通院が厳しい人は内服だけにするとかね。

 

S:医者はいろいろと考えているんだなぁ。大変な仕事だよ。

 

Dr:生活環境や仕事に合わせて抗がん剤を選んでも、合わなかったら、別の抗がん剤を強いることになるか、中止するしかないから、患者さんも大変だよ。

 

S:俺の場合、再発のリスクが低いかどうかもう一度主治医に聞いてみようっと。次の外来が来月だから、手術からちょうど2か月後だな、

 

Dr:あ、ちなみに、再発予防の抗がん剤治療は、通常手術後4~8週に始めることになっているよ。

 

S:げ、俺ぎりぎりじゃん。

 

Dr:心配だったら、外来を早めてもらったら?主治医もちゃんと考えているし大丈夫だと思うけど。

 

S:そうするよ。

 

 

~ちょっと一言~

手術が無事に終わったら、皆さん今度は再発の心配がでてきます。再発のリスクを下げたい気持ちは分かりますが、抗がん剤には必ず副作用があるので、どうするかは主治医とよく相談ですね。