「医者に聞きたい!」ドクター都のほろ酔いがん相談

がんについて対話形式でじっくりと分かりやすく説明していきます。ほろ酔いで(笑)

ケース1 がんが心配な高橋さん(65歳男性)

今回登場するのは、いくつか持病を抱え健康面に不安があるためお子さんに貿易会社を譲り、悠々自適の暮らしをしている高橋さんです。

高橋さんは心臓と肝臓に問題があり、月に2回病院に通っていますが、これまでにがんを指摘されたことはありません。

 

 

 

 

高橋さん:やあ都先生、お久しぶりです。

 

Dr都:お久しぶりです。最近は体調いかがでしょうか。

 

高橋さん:んー、良いとは言えないけど、最悪の状態ではないし、この歳だからしょうがないと諦めているよ。

 

Dr都:そうですか。前回お会いした時は、ここ数年心臓の発作は起きていないし、肝臓の数値も落ち着いているとおっしゃってましたね。

 

高橋さん:そうそう。それから変わらずだよ。都先生は元気?あと、最初は生ビールでいい?

 

Dr都:元気です。はい、生ビールで乾杯しましょう。

 

高橋さん:そういえば、最近知人ががんで亡くなってさ。昨日は芸能人の○○がすい臓がんで亡くなったというニュースをやっていたなぁ。

 

Dr都:がんって本当に身近になっちゃいましたよね。今や2人に1人ががんになる時代ですからね。

 

高橋さん:2人に1人?

 

Dr都:はい。60歳までにがんになる人の確率は7%くらいなのですが、それ以降急速に増えて、80歳になるまでには約半分の人が何らかのがんになると言われています。

 

高橋さん:俺なんか、まさにじゃない。やだなぁ。がんになりたくないよ。何かがんにならない方法はないものかね?

 

Dr都:男性のがんの5割、女性のがんの3割は生活習慣によるものだと言われているので、まずはその改善をすることですね。

 

高橋さん:お、ビールがきたよ、とりあえず乾杯しよう。乾杯!

 

Dr都:乾杯!

 

高橋さん:で、さっきの話だけど、具体的にどんな生活習慣ががんになるの?

 

Dr都:一番有名なのはタバコですね。がんの原因の30%はたばこだと言われています。

 

高橋さん:それはタバコを吸うと30%の人ががんになるということ?

 

Dr都:うーん、ちょっと違っていて、タバコを吸っている人と吸わない人のがんになった人の割合を比べると、吸っている人の方が30%高かったという研究結果によるものなんです。

 

高橋さん:なかなか難しいね…。

 

Dr都:皆さん同じような反応をしますよ(笑) 過去にこの話を理解できた患者さんは一人だけでしたね。大学で統計学を教えていた先生でした。

 

高橋さん:じゃあ、俺も大丈夫か(笑)

 

Dr都:大丈夫です(笑) この分野は疫学といって、医学の発展のためには大事なのですが、統計学の考え方を用いるので理解するのが難しいんですよ。

 

高橋さん:なるほど、それで統計学の先生だったのね。

 

Dr都:そうです。一般の人に説明する時には、「男性のがんの30%である約8万人が毎年タバコが原因のがんになる」と言っています。

 

高橋さん:それだとまだイメージできる気がする。それにしても8万人って結構いるね。

 

Dr都:そうなんですよ…。タバコに関連したがんは、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんなどたくさんあるので。

 

高橋さん:そんなに…。

 

Dr都:私にタバコとがんを語らせると、1時間は軽く話せますよ。

 

高橋さん:遠慮しとくよ(笑) 俺は吸わないからさ。

 

Dr都:そうですね。それより、食べ物はどうしましょう?

 

高橋さん:都先生に任せるよ。

 

Dr都:じゃあ、これとこれとこれで。

 

高橋さん:お、焼き魚いいねぇ。そういえば、昔、「焦げた部分を食べたらがんになる」と聞いたことがあるけど、あれってホント?

 

Dr都:発がん物質が含まれているので、可能性はあるというレベルですが…。

 

高橋さん:えー、もう焼き魚食えないよ。

 

Dr都:毎日大量に焦げを食べ続けなければ大丈夫ですよ。それに皮の中にほとんど含まれているので、皮を外して食べればいいですし。

そういえば、焦げの中の発がん物質って日本人の研究者が焼き魚の中から見つけたんですよ。

 

高橋さん:そんなこと言われたら気持ちよく食べられないよ…。焦げた皮が美味しいのに…。たまに思うけど、医者ってそういうところデリカシーないよね。

 

Dr都:すみません…。あと、最近では炭水化物を高温で加熱調理した時に作られる物質も発がん性が言われていますね。パンの焦げや、フライドポテト、クッキー、野菜炒めとか…

 

高橋さん:都先生、ストップ!食べる気が無くなっちゃう!

 

Dr都:すみません…。

 

高橋さん:話を戻そう。がんに関係する他の生活習慣にはどんなものがあるの?

 

Dr都:食生活ですと、「塩分のとりすぎ」「野菜や果物をとらない」「熱すぎる飲み物や食べ物をとること」は胃がん食道がんのリスクだと言われています。

 

高橋さん:それならすべて大丈夫そうだ…少しほっとしたよ。

 

Dr都:あとはお酒の飲みすぎも食道がんや大腸がんのリスクだと言われていますね。飲みすぎの基準は、男性で毎日飲む人だと、1日の飲酒量が、日本酒2合以上、ビール大瓶(633ml)2本以上、焼酎・泡盛原液で2/3合以上、ウイスキー・ブランデーはダブルで2杯以上、ワインはボトルの2/3以上です。

 

高橋さん:お酒ねぇ。若いころはしこたま飲んだけど、年とってからはあまり飲まなくなったし、体調崩してからは、こういう時にちょこっと飲むくらいかな。家では飲まないね。

 

Dr都:そういえば、高橋さんが肝臓悪い原因はお酒でしたっけ?

 

高橋さん:実はB型肝炎ウイルスのキャリアでね。母がB型肝炎だったから、母子感染ってやつ?それなのにお酒たくさん飲んでたからねぇ。お酒を控えるようになってからは、大丈夫だよ。

 

Dr都:そうでしたか。話が戻りますが、がんと生活習慣の中には感染という項目もあるんですよ。

 

高橋さん:B型やC型肝炎が肝臓がんになるってやつ?

 

Dr都:それが代表的なものですね。他には、ピロリ菌と胃がんヒトパピローマウイルスの子宮頸がん、HTLV-1と成人T細胞型白血病などがあります。

 

高橋さん:ピロリ菌や子宮頸がんのウイルスは聞いたことがあるけど、エイチティーなんとかってのは何だい?

 

Dr都:日本語ではヒトT細胞白血病ウイルスI型という名前で、南九州や沖縄で多く見られます。

 

高橋さん:はじめて聞いたよ。

 

Dr都:東京出身で男性で、高橋さんの年齢だと知らない人がほとんどだと思います。今では妊娠時の検査項目に含まれているので、若い方だと知っている人は多いですかね。

  

高橋さん:調べて感染を防げるの?

 

Dr都:HTLV-1はほとんどが母乳で感染するので、その対策すれば大丈夫です。

  

高橋さん:B型肝炎C型肝炎も予防できるの?

 

Dr都:B型肝炎は、出産直後に免疫グロブリンやワクチンを投与することで赤ちゃんへの感染を防ぐことができます、完全ではないですが。

 

高橋さん:俺も今の時代に生まれていれば、ならなかったのかもしれないね。

 

Dr都:そうですね。でも高橋さんの場合はB型肝炎ウイルスは活動性がなさそうですし、原因はやっぱりお酒でしょう?

 

高橋さん:手厳しいな(笑) まあ仕事上しょうがなかったんだよ。

 

Dr都:今たまにしか飲まずに、肝臓の状態が落ち着いているのならよいですね。あとは、適正体重でいることもがんの予防と言われています。高橋さんは太りすぎずやせすぎずでちょうど良いです

 

高橋さん:体重も関係するんだ?

 

Dr都: BMIってご存知ですか?それ男性ではが21-27、女性では21-25の人ががんによる死亡リスクが低いです。

 

高橋さん:BMIは聞いたことあるな。俺のBMIはいくつなんだろ。

 

Dr都:身長と体重を教えて頂ければ計算しますよ。

 

高橋さん:175㎝、70㎏だけど。

 

Dr都:BMIは体重(㎏)÷(身長(m)×身長(m))なので、高橋さんの場合は、70÷(1.75×1.75)=22.8です。ちょうどいいねです。

 

高橋さん:良かった。でも体重が関係するんて意外だな。

 

Dr都:先ほどのタバコの30%と比べて、体重によるがんリスクは2%くらいなんですけどね。

 

高橋さん:2%か…微妙だなぁ(笑)

 

Dr都: はい(笑) 最後は、運動習慣もがん予防になりますよ。運動はされていますか?

 

高橋さん:運動は…ゴルフだけだな。妻は近くのジムに通っているみたいだけど。

 

Dr都:「息がはずみ、汗をかく程度の運動を週に60分以上」という指標があるので、それを目標に運動すると良いですね。ゴルフだと、カートで移動するからあまり汗はかかないでしょう?

 

高橋さん:確かに(笑) さて、注文した料理がきたし食べようか。

 

Dr都:はい。生ビールお代わり!

 

高橋さん:都先生、しゃべりすぎてのどが渇いたんじゃない?たくさん飲んでよ。

 

Dr都:高橋さんが控えているので、私も今日は控えめにします。

 

高橋さん:無理なさらずに(笑)

 

Dr都:はい(笑)